医療レーザー脱毛の副作用である、硬毛化・増毛化について

硬毛化・増毛化について

今回は医療レーザー脱毛でよく目にする、硬毛化、増毛化の副作用についての記事です。

先生方が、お客様に脱毛のカウンセリングをする際は、副作用について一通りお話されますが、その中で、硬毛化、増毛化という項目も必ずあると思います。クリニックにより呼び方は様々ですが、硬毛化、増毛化のいずれかを使用するクリニックもあれば、まとめて硬・増毛化としているクリニックもあります。以下は硬毛化として統一して記載します。

そもそも硬毛化とはなんでしょうか? 医療レーザー脱毛は当然ですが、毛を生えてこなくするために、毛根ないしバルジ領域を狙ってレーザーを当てる施術です。通常であれば回数を重ねる毎に毛の数は減り、濃さも薄くなっていきます。しかしながら硬毛化、増毛化の副作用が出た場合、逆に毛が濃く、目立つようになってきます。

頻度はそこまで高くなく、日本では脱毛を受けた方の1%弱とも言われています。実際の臨床での印象は、ほとんど見ることはなく、もっと低いと思われます。海外ではもう少し頻度が高いようです。どの部位にもおこる訳ではなく、産毛が多い部位である、顔,うなじ,背中,上腕,肩と発生する部位は決まっています。発生機序ですがまだ未知の部分が多いようです。

実際の診察で、硬毛化か否かの判定はかなり難しいです。施術前の比較する写真がなければほぼ無理です。施術前後の写真を見比べて、後のほうが毛が濃くなっている場合は、硬毛化として対応しています。かなり微妙なケースも多いので、判断に迷う場合は念のため、硬毛化疑いとして対応するようにしています。

硬毛化と診断した、または確定ではないが疑われるような場合の対応はクリニックによってかなり異なります。以前は硬毛化が疑われた時点で、その部位の施術は中止するのが一般的でした。現在も中止するのが一番無難な選択肢と思われますが、継続して毛が減ってくる可能性もあるため、継続をするクリニックもあります。その場合は、硬毛化がさらに進行するリスクも十分説明して、お客様との話し合いで決めていっています。

硬毛化した場合の医学的な対応としては、主に4通りの対応方法が考えられます。
①その部位の施術を中止する。
②施術を今まで通り継続する。
③出力を強くして、施術を継続する。
④ニードル脱毛に切り替える。

①の施術の中止が、最も無難で現実的な選択肢です。実務上もほぼこちらの対応が取られることが多いです。その部位の脱毛は断念せざるを得ませんが、少なくとも悪化することは避けられます。また時間を置くと一度硬毛化した毛が落ち着いてきて、以前と変わらない状態に戻ることも期待できます。

②はそのまま継続する方法ですが、硬毛化が進行して悪化するリスクがあります。もちろん施術を継続して脱毛の効果が出てくる可能性もありますが、ややリスクは高いです。十分なインフォームドコンセントが必要になります。

③はかなり攻めた方法です。出力を強めることで、理論上は脱毛の効果が高まるためです。しかし火傷のリスクも高まり、さらに硬毛化を助長するリスクもあります。おそらくこちらの方法をとっているクリニックはかなり少ないでしょう。リスクがあまりに高いためです。

④は全く異なる視点での対応です。現在は廃れつつありますが、ニードル脱毛はレーザーや光脱毛が出てくる前は行われていた脱毛方法です。細い針を毛穴に入れて、電気で毛根を焼くため、実は現在でも最も確実性の高い脱毛方法を言われています。しかし、果てしない時間がかかり、また施術者の技術がかなり必要です。痛みも強いです。レーザー脱毛が普及した現代では非現実的な方法と思われます。

先生方は迷ったら①のその部位の施術を中止するのが、お客様にもクリニックにとっても、最も安全な選択肢です。もしお客様の強い希望がある場合は、リスクを説明した上で、②の今まで通りの施術を継続するのが、対応できる範囲でしょう。③のように攻めるのは、リスクが高いためおすすめしません。

以上硬毛化についてみてみましたが、実際に遭遇することはかなりまれです。間違いなく硬毛化という症例に出会ったことは実はまだありません。硬毛化疑いの症例はありましたが、それも年に1例あるかないかくらいです。多くの先生には実際みることはないかもしれませんが、もし遭遇したら今回の記事を参考にして下れば幸いです。